
主宰からのお便り~丘の上から
- 第五回 「丘の上から」
- 猛暑や大雨でお困りの方はいらっしゃいませんか。科学が発達
- しても、自然の猛威にはなかなか太刀打ちできませんね。何より
- も健康第一にお過ごしください。
- 終戦から八十年目の今年、平和について考える機会が増えてい
- ます。私は七月末に、東京の下北沢で上演された「廃墟」を観ま
- した。TRASHMASTERSという劇団の公演で、「秋麗」会員の小
- 崎実希子さんがその一員。当日の小崎さんも熱演でした。
- 戦後の焼野原のなか、食料難に苦しむ一家。歴史学者の父、会
- 社で組合活動をしている長男、特攻隊崩れの次男、人間を許し信
- じようとする次女、その一家を取り巻く人々が論じる戦争責任や
- 戦後の民主主義の在り方など。これが第二次世界大戦の一年後に
- 、三好十郎によって書かれた戯曲と知って驚きました。現代人へ
- の問題提起として受けとめることができたからです。厖大な量の
- 台詞をよどみなくつづける俳優陣にも圧倒されました。
- 初秋の空を見上げるたびに、世界から一日も早く戦争や飢餓が
- 無くなりますようにと祈っています。(藤田直子)
- 第四回 「丘の上から」
- 大河ドラマ「べらぼう」が話題になっていますね。東京の上野
- で開かれた浮世絵展や蔦重展を観に行きました。そして、もう一
- つ。茨城県の五浦にある岡倉天心五浦美術館で開かれた「浮世絵
- 展―隅田川でたどる江戸の暮らしと文化―」にも出かけました。
- この展覧会の浮世絵はすべて「秋麗」同人の塚原涼一さんが蒐
- 集したものです。見応えのある250点でした。サラリーマンが
- 一人で集めたことも注目され、NHK水戸の番組で紹介されまし
- た。現在、東京の隅田川の近くに住んでいる塚原さんですが、故
- 郷は五浦です。今回の旅では、塚原さんの案内で、岡倉天心が愛
- した五浦の風景を楽しみ、浮世絵を見る楽しさを教えてもらいま
- した。
- この地には別の思い出があります。今から約30年前に、師の
- 鍵和田秞子と句友たちと共に訪れたのです。六角堂、勿来の関を
- 歩いたことが昨日のように思い出され、感無量となりました。鍵
- 和田秞子先生が亡くなって、この6月で5年が経ちました。
- (藤田直子)
略歴
●藤田直子(ふじた なおこ)
- 1950年 昭和25年2月5日 東京都三鷹市生まれ
- 1972年 立教大学文学部英米文学科卒業
- 1980年 作句開始
- 1982年 鍵和田秞子に師事
- 1984年 「未来図」創刊時に入会
- 1988年 未来図新人賞受賞
- 1989年 「未来図」同人
- 1990年~2000年 「未来図」編集担当、看護専門学校英語講師
- 1997年 第1句集『極楽鳥花』(ふらんす堂)刊行
- 2003年 未来図賞受賞
- 2006年 第2句集『秋麗』(富士見書房)刊行
- 2008年 『鑑賞女性俳句の世界 2巻』(共著)刊行
- 2009年 「秋麗」創刊
- 2014年 第3句集『麗日』(本阿弥書店)刊行
- 2018年 自註 現代俳句シリーズ・12期34
- 『藤田直子集』(俳人協会)刊行
- 2020年 評論 『鍵和田秞子の百句』(ふらんす堂)刊行
- 現在 「秋麗」主宰
- 俳人協会評議員
- 国際俳句協会会員
- 日本文藝家協会会員
- NHK文化センター青山 講師
- 朝日カルチャーセンター千葉 講師