
主宰からのお便り~丘の上から
- 第三回 「丘の上から」
- 先月、本屋さんのことを書きましたので、今月は私の好きな本
- について少し書きます。
- 普段も俳句の本ばかり読んでいると思われるかもしれませんが
- 、そのようなことはありません。仕事が一段落して、ほっと一息
- ついたとき、小説や随筆を読みます。最近では本屋大賞受賞の『
- カフネ』(阿部暁子著)を読みました。
- 湯川秀樹の随筆は、いつ読んでも心の栄養になる気がしていま
- す。物理学は苦手ですが、湯川秀樹の子どもの頃からの思い出が
- 綴られた『旅人』を読んだのが最初のきっかけでした。その後、
- 『天才の世界』『本の中の世界』『創造的人間』を続けて読みま
- した。いったん読み終わってもまた開いて読みたくなるのは、内
- 容が濃いので、二回目に気づくことがあるからだと思います。他
- の科学者の随筆も開くのですが、すぐにまた湯川秀樹に戻ってし
- まいます。
- 皆さまにも、ついつい読みたくなる作家がいるのではないでし
- ょうか。(藤田直子)
- 第二回 「丘の上から」
- 心あたたまるニュースがありました。アメリカのミシガン州の
- チェルシーという街で、本屋さんが引越しをしたというニュース
- です。この本屋さんは、「セレンディピティ・ブックス」という
- 、独立系の書店。「セレンディピティ」は「偶然の発見」「予期
- せぬ幸運の出来事」という意味で、店主が独自の視点で選んだ本
- を仕入れて販売している書店とのことです。
- 引越し先は100メートル離れた、2.5倍の広さの店舗で、
- その引越しを地元のお客さんが手伝ったというのです。約300
- 人が歩道に2列に並んで、1冊ずつ、手渡しをしていき、2時間で
- 9100冊の本が運ばれたそうです。普段から読書会を開催して
- きた、地元の人々に愛されているお店ならではの引越しだったよ
- うです。
- 日本でも、独立系の書店をときどき見かけますね。立ち寄ると
- 、普段はあまり縁がないような本に出会い、わくわくします。そ
- ういうお店を大事にしたいという気持ちは私たちも同じだわと思
- いました。(藤田直子)
略歴
●藤田直子(ふじた なおこ)
- 1950年 昭和25年2月5日 東京都三鷹市生まれ
- 1972年 立教大学文学部英米文学科卒業
- 1980年 作句開始
- 1982年 鍵和田秞子に師事
- 1984年 「未来図」創刊時に入会
- 1988年 未来図新人賞受賞
- 1989年 「未来図」同人
- 1990年~2000年 「未来図」編集担当、看護専門学校英語講師
- 1997年 第1句集『極楽鳥花』(ふらんす堂)刊行
- 2003年 未来図賞受賞
- 2006年 第2句集『秋麗』(富士見書房)刊行
- 2008年 『鑑賞女性俳句の世界 2巻』(共著)刊行
- 2009年 「秋麗」創刊
- 2014年 第3句集『麗日』(本阿弥書店)刊行
- 2018年 自註 現代俳句シリーズ・12期34
- 『藤田直子集』(俳人協会)刊行
- 2020年 評論 『鍵和田秞子の百句』(ふらんす堂)刊行
- 現在 「秋麗」主宰
- 俳人協会評議員
- 国際俳句協会会員
- 日本文藝家協会会員
- NHK文化センター青山 講師
- 朝日カルチャーセンター千葉 講師